夏月一会


こういうことは、何回かあった。


テレビで伯父が出てきたり、伯父のことを言っていたりすると、凪は、今みたいにチャンネルを変えたり、さっさと食事を終えて部屋に戻ったり、伯父のことを見ないようにしている。


始めは、父親がテレビに出ていたりするのは、気恥ずかしかったりするのかと思っていたけど、凪のそれは、そういうものじゃないような気がした。



説明しろと言われたら困るけど、何となく、そう感じた。





「ねえ、麗海さん」

料理番組が終わったところで、凪が口を開いた。


「麗海さんの両親って、一年前に亡くなったんだよね」

私の方は向かず、テレビの方を向いたまま、とても静かな口調で凪は言った。


「うん」


何で凪はいきなりそんなことを言ってくるんだろう……

そう思ったけど、私はただ頷いた。



「ごめんね。法事とか、行かなくて……僕、その時、知らなかったんだ」


「ううん。いいよ、そんなの。凪君が気にすることじゃないじゃない」


正直、凪が私の両親のことを知らなかったというのに驚いた。


でも、伯父だって法事に来れないほど忙しかったのだし、きっと伝えるのが遅くなった
だけだろう。

そう思って、大して気にしないでいた。


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