夏月一会


凪は、自分と父親とのことに、触れられたくない何かがあるらしい。

その証拠に、父親のことはまともに話したりはしない。


そして、母親のことは『お母さん』と言っているのに、父親のことは『父』と言っている。


それがどうしてなのか、私は聞かなかった。


凪には、決して他人を踏み入れさせない、凪だけの領域があることに、気付いていたから……





私は、凪のことをもっと知りたいと思いながらも、その領域に近づくことさえも、できなかった。


少しでも近付くだけで、何かが壊れていきそうな、そんな気がして恐かったから……


だから私は、凪が作る領域との距離を守っていた。





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