夏月一会

涼風

凪が絵を描いてる間が一番心が安らいだ。


その時だけは、何となく、近寄りやすくて、いつもよりは距離を縮めることができる気がする。




「ねぇ、麗海さん。前から思ってたんだけどさ、何でここで洗濯物干してるの?」

凪の言うとおり、私は初めてここ、バルコニーにきた次の日から、ここにわざわざ物干し竿やらを運んできて、洗濯物を干すようにしたのだ。


「別にいいでしょ?ここが一番日当たりがいいの。洗濯物だってすぐ乾くし、それにこんないい所、一人占めになんてさせないんだから」


「別に一人占めしてたわけじゃないって」


「じゃあいいでしょ?大丈夫。景色の邪魔にならないようにするから」


「…なんか麗海さん、初対面の時と印象変わったね」


「それはお互い様」



何だかんだで、凪と話すのは楽しい。

内容は他愛もないことだけど、それが一番楽しかった。


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