夏月一会


「そういえば麗海さんて、今四年生だよね。就職活動とか、してるの?」

凪はいつものように質問を重ねてくる。


「もう決まってるよ。無事に採用試験に受かったから。まぁ、ちゃんと卒業できたら、だけどね」


「へぇ。おめでとう。何の仕事?」


「普通のOLよ。一般企業の。特に何がしたいでも、何ができるでもないから」


「いいんじゃない?平凡が一番だよ」


「…凪君も人のこと年寄りくさいってって言えないんじゃない?年の割りの落ち着きすぎ」


『平凡が一番』なんて、十七歳の言葉に思えない。

凪君は、もうすでに人生を達観してるみたいだ。


「そうだね」

凪は笑って頷いた。
私も、それにつられて笑った。



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