夏月一会


「でも、僕、夏は好きなんだ。誕生日は落ち込んでたけどさ」

笑ったあと、凪はそう言った。


「そうなんだ。意外…。なんで?」

私がそう聞くと、凪はじっと景色を見据えた。

そして、ゆっくりと口を開く。


「夏は、全てのものが生きてる瞬間だと思う。四季の中だと、一番活発になる時だと思うから、かな」


「……どういう意味?」

凪の言葉が難しくて、私は首を傾げた。


「僕の中のイメージだとね、春は、命がたくさん生まれて目覚める時で、夏は、その命が一生懸命育つ。秋には少し休息を入れて、そのまま冬に寝込んじゃう。そんな感じなんだ。その中で、僕は夏が好きなんだ」


「なるほど。上手いね、凪君」

私が言うと、凪は微笑んで応えた。

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