夏月一会
「麗海さん。海に行こうよ」
ある日、バルコニーで唐突に凪が言った。
「何でいきなり?」
私は首を傾げて尋ねた。
「僕、夏の間出掛けてなかったし、麗海さんも遊びに行ったりできなかっただろ?」
「そうだけど……それで何で海?」
「行ったことないんだ。だから行って見てみたい」
凪は、まるで子供のように言った。
「海……かぁ」
そういえば暫く行ってなかったなぁ、とか思いながら、私は考える。
「麗海さん、海は好きじゃない?」
「そういうわけじゃないけど……日に焼けるなぁって思って」
紫外線は肌の敵。
焼けやすい肌の私は、海に行くと、本当にすぐに真っ黒になってしまうのだ。
「日焼け止め塗ったら大丈夫でしょ。なんなら僕が塗るの手伝うよ」
「こら。そんなこと言うんじゃありません」
凪はいたずらっぽく笑った。
こういうところは、凪もやっぱり年頃の男の子なんだと感じる。
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