夏月一会

「別にさ、海で泳ごうとか、そういうわけじゃないよ。ただ見たいんだ」


「んー……」


私は迷った。

見るだけなら行ってもいい。
けど、逆にそれだけなら行くまでが面倒くさい気もする。


「八月三十一日に……」


「え…?」


「僕の誕生日に、行きたい。ね、だめ?」

凪はじっと私を見つめてくる。


「しょうがないなぁ……」

そういう風に言われてしまうと、断ることができなくて、私は了承した。


「やった。麗海さんとデートだ」

凪は笑顔で嬉しそうに言った。


そんな凪に対し、私は何事でもないように振舞った。



最近、凪は私のことが好きなのかなって思わせるような発言や行動が多くなった。


多分、からかってるだけだ。

こんな風に思うのは、私の方が自意識過剰なんだ。


そう思っても、ドキッとしてしまうことが多くて、私は、五歳も年下の凪に翻弄されてるみたいで悔しかった。


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