夏月一会
凪が行ってくれて助かった。
立ち上がろうとしたら、足に力が入らなかった。
本当に、私はどうしたのだろう……
心が、落ち着かない。
凪に少し髪を触られたことに、肌を触られたことに、綺麗だと言われたことに見つめられたことに……
すごく、ドキドキしてる。
どうせいつもの冗談や、からかいだ。
いくらそうだと思っても、まだ胸が締め付けられるような感じが消えていなかった。
「はい」
「ひゃっ!?」
突然、頬に冷たい感触が走って、私は思わず叫んだ。
振り返ると、凪がすぐ後ろにいた。
「驚いた?」
凪がクスクスと笑いながら、私にジュースを差し出した。
「もう!凪!」
私は受け取りながら口を尖らせた。
「ごめんごめん」
私の様子を笑いながら、凪は私の横に座った。
その時には、さっきまでの気持ちは和らいでいた。
やっぱり、私の気にしすぎだ。
そう思って、私は缶ジュースを開けて、一口飲んだ。
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