夏月一会

凪は再び鉛筆を動かして、絵を描き始める。


凪は、鉛筆一本で、海を細かいところまで捉え、表現していく。


私はその被写体である海を見つめた。

海面は太陽の光に輝いて、波打ち際では一定の早さで波が寄せては返していた。


その音に、私は耳をすませてみる。




「ねぇ、麗海さん」

凪が私に話しかけてくる。


その声は、穏やかで、とても自然と波の音に乗っていた。



凪は海に似ている。

漠然とそう思った。



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