夏月一会

「本当は、このことは君には言わないことになっている。あいつに頼まれていた。私も、言うつもりはなかった」

伯父は、前置きのようにそう言った。


「あいつって……?」

さっき、凪のことを『あいつ』と言っていた。

でも、今度はまた違う人物を指している。


伯父は、一度目を伏せ、それからゆっくりと視線を上げ、口を開いた。


「大槻浩司……君の父親だ」




私は、言葉を失った。


どうして、いきなりお父さんの名前が……


真実を知る前に、私の頭は更に混乱する。


お父さんだって、凪とは一度も会ったことはないはず……

凪だって言っていた。
私の両親には一度も会ったことがないって……


なのに、どうして、お父さんが関係してくるの……?


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