夏月一会
柳さんの運転する車の後部座席で、私はぼんやりと暗くなっていく外を見ていた。
見ていた、といっても、焦点は合っていない。
窓の外の方を向いてるだけで、景色は何も見えてなかった。
私が見ていたのは、私の記憶……
私の家族のことだった。
私の家族は、どこにでもいるような、普通の家族だった。
本当に仲が良くて、私は愛されて育ったんだと、自分でも思う。
特に私は、お父さんが大好きで、小さい頃はお父さんにべったりだった。
『おとうさん。れみね、おおきくなったら、おとうさんのおよめさんになるの』
そんなことをしょっ中、それも本気で言っていた。
その度に、お父さんは優しく笑って、私の頭を撫でてくれた。
中高生の頃になると、周りの友達は、両親を煙たがっていたけど、私はそんなことはなかった。
家族三人で、ずっと仲良く暮らしていた。
一年前に、両親が事故に遭うまでは……
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