夏月一会

私は、聞かない方がいいのかもしれない。

でも、そうしても気になった。


どうして、お父さんと伯母の間に子供が……凪が産まれたのか……




「柳さんは知ってるんですよね」


「…はい。私の家系は、代々松本家にお仕えしていますので、大体の事情は……」


「教えて下さい」

私は、後部座席から身を乗り出すようにして柳さんに詰め寄った。

柳さんは無表情のままだ。



「……後悔、しませんか」
やや間をおいて、ゆっくりと口を開いた。

「……そのことを知って、あなたは後悔しませんか……」



『後悔』

柳さんの重い言葉を聞いて、私は考えてみる。


私は、お父さんと伯母の関係を知って、後悔するのだろうか……

知らなければよかったと、思うのだろうか……



でも……



「しません」

はっきりと私は言った。


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