夏月一会

悲しい運命


私の大槻という名字はお母さんの方の姓だということは、知っていた。

つまり、お父さんは、婿養子だったということだ。


そのせいなのか、私はお父さんの実家のことを、松本家のことを、全く知らなかった。





松本家というのは、代々長男が政治家など、国に携わる仕事をするように決められていた。

決められていたといっても、始まりがいつからか分からないような曖昧なしきたりではあったらしい。


その家の、長男として、浩司は産まれた。


浩司もまた、松本家のしきたりに沿って、同じような道を進むことを決められ、育てられていた。


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