夏月一会
浩司の実母は、浩司が五歳の時に、病気で他界した。
そしてそその数年後、父親……松本家の先代……が再婚することになった。
相手は、ある政治家の娘であったが、未亡人だった。
彼女もまた、事故で伴侶を亡くしていたのだ。
その間にも、子供がいた。
それが、慶一だった。
慶一は、誰に何を言われるでもなく、常に優秀だった。
それに対し、浩司は、どこか劣っていた。
一般的に見て、決して本当に劣っていたわけではない。
周りがかける期待に、応えきれなかっただけだ。
そして、浩司の温厚で柔和な性格は、松本家の役割を果たすには、向いていないのではないか。
そう前々から思っていた先代は、慶一を松本家の跡取りにということも考え始めた。
慶一は、浩司より三つ年上だったため、長男は慶一ということになる。
だからそれでも構わない。
松本家の血が途絶えることも心配されたが、それは浩司が子供を残せば問題ない。
そうして、慶一の方も、本格的にその道を行くべく教育されることとなった。
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