夏月一会
浩司が十八歳の時……
大学受験をした浩司は、父親が望んだ一流大学に不合格。
滑り止めの中堅私立大学に進学することとなった。
この時点で、先代の中で、すでに国立大学に進んでいた慶一が、松本家の後を継ぐことがほぼ確定した。
しかし、その約四年後、浩司の大学卒業を控えた三月。全ての発端とも言える出来事が起こった。
「妊娠……だと!?」
浩司の告白を聞いて、先代の顔から、一気に血の気がひいた。
「誰だ!誰を孕ませた!?」
今度は青筋を立たせ、浩司を怒鳴りつけた。
「彼女……です。同じ大学で…交際している……」
浩司は、終始青い顔をして、先代の前に対峙していた。
浩司には、同じ大学の同級生に、家の人間には隠れて交際していた女性がいた。その彼女の妊娠が発覚したのだ。
その彼女というのは、麗海の母親だった。
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