夏月一会
「役割……ですか?」
「そうだ。遥にはやるべきことがある。それは、松本家の次代を残すことだ。そのために慶一との結婚を認めた。それが、遥にはできると思ってだ」
その言い方は、まるで、諭すようでもあった。
しかし、諭すようでもあったが、脅迫しているようでもあった。
もし、それができないのなら、意味がない。
それができないのなら、必要ないのだと。
「どうしても嫌だというのなら無理強いはしない。どうするかはお前たちが決めろ」
先代のこの言葉に、浩司や、慶一よりも、遥が悩んでしまった。
自分が嫌だというせいで、慶一が先代に蔑まれるのではないか。
自分のせいで、松本家の家系も途絶えさせてしまうのか。
背負わなくてもいい負担まで背負い、責任を感じてしまった。
そうして、悩み考えた末に、遥は決心した。
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