夏月一会

凪の言っていた言葉の意味が、今になってわかった。



(凪君は、将来画家になりたいとか?)

(まさか。そんな大それたこと、考えたこともないよ)



違う。



(進学とか、考えてないの?…)

(そこまで考えたことないなぁ…)



違うんだ。
考えたことがないわけでも、考えてなかったわけでもない。

考えないようにしてたんだ。



(南の島にでも行ったら、きっと生きていけないよ?)

(そんなこと、ないよ……どこへ行ったって、変わらないよ)



あの言葉の意味は、「どこにいっても大丈夫」ということじゃない。



「どこへ行っても、生きていくことはできない」


そういう意味だったんだ。



今更気付いても、もう遅い。

もう、どうしようもないところまできてしまったんだから……





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