夏月一会
そのまま昼も過ぎて、日は傾いていった。
それもまた、当たり前のように……
その間、私は眠っていたのか、起きていたのか分からないくらい虚ろだった。
時間が過ぎていくのが早いような、遅いような、不思議で、よく分からない状態だった。
それでも、はっきりと分かることはあった。
それは、時間は確実に進んでいくということだった。絶対に、止まることはなく、確実に……
それは、とても残酷なことのように思えた。
時が経ってしまうと、凪がいなくなってしまうから……
私は、その現実を見たくなくて、目を閉じた。
視界ななくなり、その代わりに浮かんできてしまうのは、凪のことだった。
凪の、優しい笑顔……
いつも私に向かって笑ってくれていた。
ご飯のとき、いつもその顔で、おいしいって言ってくれてた。
凪は、知らない。
凪のお陰で、私の料理のレパートリーは増えていたということを……
凪が時々、艶のある表情をするから、それにドキドキさせられていたということ……
凪に『麗海さん』と呼ばれると、なんだかくすぐったくて、私の名前がいつもと違うように響いて聞こえていたということ……
もう、呼ばれることないけれど……
.