夏月一会

「麗海さん」



…これは、夢?

凪の声が聞こえる。
凪のこと考えてたから、聞こえるのかな……


私は、うっすらと目を開けた。



「麗海さん」

またはっきりと聞こえる。
すぐそばに人の姿があった。


「麗海さん。何してるの?こんなところで」


「……!」

私は驚いて身体を起こした。


凪がそこにいた。本物の凪がそこにいた。


「幽霊でも見たような顔しないでよ」

凪は、いつものようにクスッと笑った。


「どうして…」

私は辛うじてそれだけ声に出せた。


そうして、凪がここに……

今頃は病院で、もう、帰ってこないと思っていた。


「どうしても自分で取りにいきたいものがあるって言って、外泊させて貰ったんだ。…医者に反対されたし、かなり無理言って、だけどね。でも、もう落ち着いてるから大丈夫だよ」


「……取りにいきたいもの?」

私が尋ねると、凪は微笑むだけで、何も言わなかった。


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