夏月一会
「麗海さん……もう帰っちゃたのかと思った」
そう言いながら、凪はそっと私の頬に手を触れた。
そして、指が私の目元をなぞった。
「目、腫れてるね」
呟くように凪は言った。
「…気に、しないで。ちょっとだけ、寝不足なだけだから……」
下手な言い訳だと思いながらもそう言った。
泣き腫らした目を見られたくなくて、私は俯いた。
「ごめん、ね……麗海さんに、色々黙ってて…辛い思いさせた」
凪は、謝る必要なんてないのに、とても申し訳なさそうな、悔いるような声で、そう言った。
謝らないといけないのは、私の方なのに……
「……めん、な…さい……ごめん……なさい……」
あまりにも悲しくて、どうしようもなくて、泣きたくなかったのに、私はまた泣いてしまった。
「私……何…も、知らな……くて……」
泣いてすむことじゃない。
謝ってすむことじゃない。
何を言ったって、言い訳にもならない。
でも、止まらなかった。
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