バース(アイシテルside伸也)
親父は俺に高層マンションを一つ与えた。
眠らない街と呼ばれる場所にあるマンション。
その街は沢山のネオンと沢山の声に包まれていた。
暗闇を嫌う俺には最高の場所。
この街に引っ越してきた日に話しかけてきたのが、今隣で口元の血を拭うこの男だった。
名前は遼。
それ以外、コイツのことは何も知らない。
誰かと関わる気なんてなかったし、一人で生きていくと決めていたのに、簡単にも俺に話しかけてきやがった。
「カッコいいから目に付いた」とかふざけた事を言いながら。
それからは何かと一緒にいる。
別に約束をして会っているわけではないけれど、街をふら付いているといつの間にか隣にいるんだ。
「俺はお前よりこの街のこと知っているから、一緒にいて損はないぞ。お前は新人さんだろ?」
何度も話しかけられた中で、俺がコイツに一番最初に口を開いたのはこの時だった。