バース(アイシテルside伸也)


「別の男に連れていかれそうだったから、拾ってきた。」



フゥ~と煙と一緒に息を大きく吐き出した。



「ありがとうございました」



女の手をゆっくりと離した猛は深々と俺に頭を下げる。



「仲いい奴だったのか?」



「そういうわけじゃ……」



優しい眼差しで猛は女を見つめる。



いつの日だったか、康さんがレイカを見ていた目と同じ目で……



猛の気持ちを察した俺はそれ以上何も聞かなかった。

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