バース(アイシテルside伸也)


そんな気持ちとは裏腹に俺には何の連絡もよこさない親父が兄貴には連絡しているのだと思うと腹が立つ。



いくら兄貴のご機嫌をとったって後継者になるつもりなんてないのに。



家族のことになると自分の感情がコントロール出来なくなる俺はイライラを募らせながら、もう日課となってしまった女の前を通る。



「今日も来てんのか」



「はい」



いつもは、これだけのやり取りしかしないのに、この日は何故か足を止めてしまったんだ。



「寒くないか?」



「少し」



自分の体を自分で抱きしめるようにうずくまる女は目線だけを俺に向ける。


< 141 / 355 >

この作品をシェア

pagetop