バース(アイシテルside伸也)
「飯、食いに行くぞ。温かいもの食え」
「お腹すいてません」
「命令だ。自分で立て」
その瞳に見つめられながら、俺の口はペラペラと喋り出した。
力ずくでもどこか暖かい場所へと連れて行きたいけど、こいつは男に触れられる事を怖がっている。
だから、俺にはこうやって言葉で脅すようなことしかできない。
女に触ることのできない俺は諦めて足を進めようとしたとき、女はスッと立ち上がった。
「今日は素直だな」
「寒いから」
「そうか」
いつもとは違い素直に俺の言う事を聞いてくれた女の行動が嬉しくて、俺はにやけそうな顔を必死に隠すために、煙草に火をつけた。