バース(アイシテルside伸也)


空が明るくなってきた頃、倉庫にいた男に送ってもらい帰って来た。



帰り際、康さんに


「いつでも来い。暇なんだろ。行くところがないならここにいればいい」


と言われた。



嬉しかった……



どこにいても一人の俺は誰かにこんな温かい言葉をかけてもらったことなんてない。



玄関を開けて一人で住むには広すぎる部屋へと足を進める。



ソファーに倒れこみ、テレビの電源を付けた。



ザァーっと音を立てて、灰色の画面が映し出される。



「俺は何をしたいんだろうな?」



本当の言葉を投げかけられるのはテレビだけ。



俺は一人の部屋でいつもこの機械の塊に話しかけているんだ。


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