バース(アイシテルside伸也)

「シン、こいつの名前は?」



笑いがおさまった兄貴はいつもの無表情に戻る。



「亜美」



俺に向けるよりは少しだけ優しい表情で兄貴は亜美に話しかけた。



「亜美」



「はい」



それでも亜美は兄貴が怖いらしい。



俺から見ればこんな兄貴は怖いうちには入らないのだが。



「突然悪かったな。名前は谷沢 和也(タニサワ カズヤ)。こいつの兄貴。シンの5歳上」



「はい」



「和也でいいし、敬語も使わなくていい」



「はい」



「怖いか?」



兄貴。



亜美は答えられないと思うぞ。



怖い人に向かって怖いとは言えねぇだろう。



「何かあったら連絡してこい。じゃあ俺行くわ」と兄貴は亜美に名刺を渡し、帰って行った。

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