バース(アイシテルside伸也)



母親に捨てられたときは、まだ寂しいって感情が残っていた。



男に狂っていた母親だったけど……



俺にとってはたった一人の母親だった。



父さんの所で住むようになってからも、いつだって俺は母さんに会いたかったんだ。



窓の外を見ては母さんが迎えに来るんじゃないかって、母さんの姿を探した。



父さんが「母さんだぞ」と連れて来た女を俺は母さんだなんて思えない。



だって、俺には母さんがいるから。



冷たい手をした母さんが俺の母さんなんだ。



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