バース(アイシテルside伸也)


ホッとしてリビングに行ってみたけど、亜美の姿はない。



寝室にもキッチンにもいない。



「亜美」



名前を呼んでもシーンと物音一つしない室内。



その時、ジャーと水の流れる音が聞こえた。



「嘘だろ……」



俺はバクバクと激しく音を立てる心音を感じながら、ゆっくりとバスルームの扉を開いた。



浴槽には赤一色に染められた水が溢れ出ている。



そして、そこには服を着たままの亜美が真っ白な顔をして横たわる。



「キャー!!!!!!亜美?!亜美?!」



いつの間にか俺の部屋に来ていたカズが悲鳴を上げ、浴槽に浸かる亜美に駆け寄った。



その悲鳴で俺の目が覚める。



俺はバスタオルで亜美の手首にある切り傷を塞ぎ、ぐったりとしている亜美を抱きかかえた。

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