バース(アイシテルside伸也)
「亜美、立ってられるか?」
コクリと頷く亜美をそっと降ろし、俺は後ろへと振り返る。
「何か用か?」
「亜美を返してくれ」
真っ直ぐに睨みつける俺に向かって、不適な笑みを浮かべる男。
「返す?」
「元は俺のもんだ」
「お前の元に返すつもりはねぇ」
亜美をあんな目に合わせた上に、まだ付きまとっているコイツに俺は今すぐ殴りかかりたかった。
でも、今は亜美を無事に帰すことが先決だ。
俺は握りこぶしを作り、必死に怒りをかみ殺す。
「後悔するぞ?」
「勝手にしろ」
俺を睨み付けたまま動こうとしない男。
ここで目を逸らせば、コイツは確実に殴りかかってくる。
亜美を守れる体制を作り、俺は男を睨みつける。
「恭さん、コイツ誰っすか?」
その緊迫感を破ったのは弱そうな見掛け倒しの男。
俺はその男の胸倉を掴み上げた。
「口の利き方には気をつけろ!!」
それと、良いタイミングで割ってはいってきてくれたな。
少しだけ感謝の気持ちをこめて。