バース(アイシテルside伸也)


亜美を車に乗せ、マンションへと向かっている車内で、俺は怒りを押し殺すのが精一杯だった。



亜美が怖い思いをしたのは分かっている。



でも、あんな場所に何故亜美がいたのか。



そう考えると怒りが腹の底から込み上げてきて、どうにかなりそうだった。



車から降り、亜美を乱暴に部屋の中へと押し込むと、怯えるような顔付きで「ごめんなさい」と亜美が呟く。



「何であんなところにいた?」



謝った理由は聞くのが怖い。



亜美に裏切られていたんじゃないかという不安が怒りに変わり、優しい口調では喋れない俺に亜美は益々怯えていく。



「色々とあって……」



男とホテルにいたのにそんな言葉で許されると思っているのかこの女は?!



「色々を詳しく説明しろ」



俺の怒りに堪えられない亜美は恐る恐る口を開いた。



亜美の口から並べられる言葉は、驚く事ばかり。



俺は亜美の何を見ていたんだろう。

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