バース(アイシテルside伸也)

「俺の女になれって言ったのも、半端な気持ちじゃねぇ。確かに俺は女関係はだらしなかった。俺の地位や外見に寄ってくる女達をゴミのように抱いては捨てた。その中で付き合った奴もいたけど、結局は向こうから離れていった。俺のことが理解できないと言って……」



自分の口で話していても虚しくなるような昔の俺。



今もさほど変わってはいないけど……



タバコに火をつけ、俺は気持ちを落ち着かせる。



「でも、お前は違っただろ?俺にタメ口をきいて、こびない女は初めてだった。俺はお前を何よりも大切に想ってる。お前と付き合いだしてからは女も一切切ってる。お前は俺のたった一人の彼女だ」



「伸也さん……」



「お前はずっと何を勘違いしてたんだか」



再び涙を流し始めた亜美をこの手で抱きしめた。



小さくて細くて……



強がりでどうしようもないけど、俺の守りたい女。



俺が生きてる意味っていってもいいくらい、俺の中では大きな存在になってきているんだ。



「私……伸也さんが好き。伸也さんには私だけを見て欲しい」



「もうずっとお前のことしか頭にねぇよ」



俺は亜美の頬に触れ、涙を拭った。



もうお前の涙は見たくない。



いつも俺の側では笑っていて欲しい。
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