バース(アイシテルside伸也)
「亜美、お前が抱えていること、全部俺に話してくれないか?」
「全部?」
「あぁ、俺は知らないとお前を守れない」
何かを考えたように少し黙り込んだ亜美は俺の腕の中でゆっくりと呼吸をしている。
亜美の息遣いを感じながら、俺は生きているんだななんて可笑しな事を思ってしまう。
「何から話せばいいのかな?」
「まずはお前の左手の傷だ」
「あっ!!」
驚いたように目を見開き、口を両手で覆う亜美が可愛い。
愛おしいと言ったほうが正しいかな。
母親とのことで色々と悩んでいたらしい亜美は家族の事を話すときだけは無表情になる。
そんなお前が俺は心配でたまらない。
いつか泡のように消えていなくなる日が来るんじゃないかと……
「お前は俺が面倒見る。だから、安心しろ」
「ん?」
「だから、お前がよければいつでも嫁にもらってやる。苗字のことも深く考えなくても、嫌になったら谷沢になれ」
母親の再婚により、どちらの姓を名乗るか悩んでいる亜美に俺は自分でも驚くような言葉を発していた。
でも、これが俺の本音だ。
死ぬまでお前を守り続けたい。
違うな。
死ぬまで俺の生きる意味であって欲しいんだ。