バース(アイシテルside伸也)
「亜美」
それでも俺はお前を傷つける。
愛おしいと思いながら、守りたいと思いながら、お前を傷つけてしまうんだ。
まだ名前しか呼んでいないのに、亜美の目には涙がたまっている。
亜美から視線を逸らし、言葉を続けた。
「レイカのこと聞いてくれるか?」
「話す必要なんてないよ。私はもう一人で大丈夫だから」
「亜美!!頼む。聞いてくれ」
「伸也さん、私はどんな理由があったにしろ、伸也さんの側には戻れない。ごめんなさい」
そうだよな……
今から俺が話そうとしていたことは、弁解にしかならない。
そして、側にいても今の段階ではレイカとの関係は清算できない。
そんな中途半端な俺と一緒にいたって……
亜美が苦しい想いをするだけだ。
これ以上、亜美を苦しめないためにも俺は立ち上がった。
このまま、玄関へと向かいこの家を出る。
でも、一つだけ言いたい。
俺のわがままを……
俺の言い訳を……
一つだけ言わせてくれ。
「俺はこれからも亜美だけが好きだ。でも、今はお前に本当のことを話せないと思う。だから、すべてが終わったら会いに来る。必ず迎に来る。だから、生きててくれ」
一方的な想いを亜美にぶつけた俺は部屋をあとにした。