バース(アイシテルside伸也)


久々の愛車に乗り込み、エンジンをかけた、その時……



コンコン


と車の窓を誰かにノックされた。



スモークの入った窓のせいで、ハッキリと顔は見えなかったけれど、俺がアイツを間違えるはずはない。



俺の人生を狂わせ、俺を捨てた男。



そもそも、俺みたいな人間に人生を与えたこと事態間違っていたんだ。



助手席に乗る亜美に何も告げずに車を降りようとすると、


「待って!!」


と腕を掴まれた。



今にも泣きそうな顔でこちらを見る亜美。



刺されたばかりだし、亜美が不安になるのも仕方ないな。



「亜美、大丈夫。親父だ」



「へっ?」



俺の言葉に気の抜けた声を出した亜美だが、不安な表情は一瞬にしてふっ飛んでいた。



「亜美は乗ってろ」



「う、うん」



突然のことに戸惑っているようだったが、俺自身も戸惑っていた。



というより、久しぶりの再会に怒りさえ感じていた。
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