バース(アイシテルside伸也)
「何の用だよ?」
車を降りるなり、威嚇する俺に親父は目を細めて
「元気だったか?」
なんてふざけたことを言いやがる。
俺を捨てたあの日から一度だって会いに来たことなどないのに……
連絡一つ寄越してこなかったんだ。
それを今更、ひょっこりと顔を出しやがって。
「金は足りているか?」
返事もせずに睨み付けている俺に、父親ぶるような質問ばかりを投げ掛けてくることに腹が煮え繰り返りそうだ。
「いいから、さっさと用件を言えよ」
「会社を継いで欲しい」
「はっ?」
予想もしていなかった言葉に俺の頭の中はパニック状態寸前だった。
「伸也。勝手な申し出とわかっている。でも、この通りだ」
今、目の前で起こっているすべてのことが夢だと思いたい。
この手で殺してしまいたいと思うほど憎んでいた男が、俺に頭を下げている。