バース(アイシテルside伸也)

「話終わったの?」



「あぁ」



亜美が心配そうに、俺の顔を覗き込んでいるけれど、俺の脳裏には年老いた親父の姿がこべりついて離れない。



「行くぞ」



「うん」



何で俺なんだよ?



親父には兄貴だって、新しい家族の息子だっているだろ?



わざわざ俺なんかを選ぶ理由がわからない。



この時、どんな理由であったとしても、始めて親父に必要とされたことに喜びを感じていた気がする。



ただ、それを素直に受け入れることが出来なかっただけで……

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