バース(アイシテルside伸也)


親父のことばかりを考えていると、あっという間に店へと着いていた。



助手席の亜美は相変わらず不安そうな顔をしている。



「亜美」



「何?」



「長い間待たせて悪かったな」



「えっ?」



亜美にこんな顔をさせてはいけない。



「一年間良く頑張った」



「うん」



「亜美は強くなったな」



「そうかもしれない」



「一人で生きていけるんだろうな」



「伸也さんがいなきゃ嫌だよ」



「あぁ」



亜美が一番大切だと想いながら……



亜美をこの手で幸せにしたいと想いながら……



こんなことを言ってしまう俺は、この段階ですべての結論を出していたのかもしれない。

< 298 / 355 >

この作品をシェア

pagetop