バース(アイシテルside伸也)
待ちに待った見合い当日、親父、俺、再婚相手の女の3人は落ち着かずにホテルへと足を踏み入れる。
このホテルはレイカとよく来ていた場所。
あの頃は入ることさえ抵抗のあった、このホテルに今は当たり前のように出入りできる。
不愉快な視線も、自分だけ場違いな感覚も今はまったくないんだ。
やっと、この場所に受け入れられる人間になったということなのだろうか。
着慣れない着物に袖を通した義理の母親は、キョロキョロと辺りを見回している。
この女が何人目の母親かなんて数えられないほど、親父の相手はよく変わる。
そんな親父が俺の見合いに真剣になる神経が未だによくわからないが、この奇跡のような偶然に遭遇できたのも、こんな親父のお陰だ。