バース(アイシテルside伸也)
俺達の様子を見て、周りが騒ぎ立てるが、今すぐにでも亜美をこの手で抱き締めたかった。
「隠していて申し訳ありません。新垣さんを父から紹介されたときに僕は知っていたんです。でも、お嬢さんを驚かせたくて、僕のことは伏せていただいていたんです」
今すぐ、亜美に触れたい衝動を押さえながら、すべてを丁寧に説明する。
「それで、私にお見合い写真やプロフィールもなしでもいいか聞いたのか」
亜美の父親はすべてを理解したように優しく笑顔を見せる。
「僕たちはお嬢さんが中学生のときに出会い、交際していました。2年前まで」
流石にこの事実にはどちらの両親も驚いたのだろう。
あからさまに、固まって動かない親達。
「僕は父の会社を継ぐために、亜美、いえ、お嬢さんと別れました。でも、心の中ではずっと引きずっていました。僕に亜美さんを下さい」
こうして、また出会うことが出来たんだ。
これが、運命でも神様のいたずらでも、俺はもう亜美を手放すつもりはない。
というより、手放すことなんて出来ないだろう。