バース(アイシテルside伸也)


頭を下げながらも、この手が亜美に触れたいと騒ぎ立てる。



「伸也、待ちなさい。私も新垣さんも展開が急すぎてついていけないよ。亜美さんの意見も伺わなければいけないし。亜美さん、どうだい?」



親父は俺の肩を叩き、顔を上げろと合図する。



「伸也さん、お見合いは?去年じゃなかった?」



「破談になった」



「そっか……」



顔を上げると、戸惑った表情の亜美が視界に入る。



「亜美さんは伸也でいいのかい?」



「そんなこと亜美に聞かなくてもいい」



そうだよな?



亜美、俺達はどれだけ離れていても想いは変わっていない。



そんなことくらい、その瞳を見れば、すぐにわかる。

< 347 / 355 >

この作品をシェア

pagetop