【完】雨音*涙音~すれ違う恋心~
「先生!すみません。
木下さん体調悪いみたいなんで。」
そう先生に向かって声を出したのは蓮だった。
私はドキリとした。
「早瀬、保健室まで連れてってくれるか?」
「はい。わかりました。」
蓮は先生にそう答えて私の体を立たせた。
「行くぞ」と耳元で低く囁きながら、
私の手をみんなに分からないように
さり気なく握って教室を出た。
教室を出た私たち。
沈黙のままあまり使われない階段の方を降りた。
「れ、蓮……」
階段の踊り場で私は沈黙を破った。
すると、蓮は私の体を思いっきり抱きしめた。
突然のことで私は、戸惑いを隠せなかった。
「れ、ん………?」
私から離れた蓮の名前を呼んだ。
蓮の表情はとても悲しそうだった…………