【完】雨音*涙音~すれ違う恋心~
「1年の頃、私が、少し笑うと桃菜に
“優愛が笑った!”って言われたことがあるの。」
「……」
「私は“そんなに珍しいことなの?”って思った。
私が笑うのを見て桃菜がすっごい笑顔で
笑ったの。私に向かっていつも以上の笑顔を見せてくれたの」
私は思っていることをすべてぶつけるつもりで
抱きつきながら言った。
「私、それが凄く嬉しくて。
でも、桃菜のあんな笑顔を見られたのは私が笑えたから。
私が笑えたのは………
――蓮が私の隣にいてくれたから。
蓮が、私の側でずっと笑ってくれたからなんだよ。」
私は抱きしめる腕を強めた。
「……優愛っ……あ、ありがと、う……っ」
私の肩にぽたぽたと落ちる蓮の涙……
その音を消すかのように
雨が降り出した―――