【完】雨音*涙音~すれ違う恋心~
あれから時が経ち、冬本番に近づいてきた。
もう、寒くてマフラーは外せないアイテムとなった。
「行ってきます!」
と玄関でリビングに向かって叫ぶと
中からお父さんが出てきた。
「優愛、お母さんに挨拶してやらないのか?」
お父さんはそう言ってリビングの中を指さした。
「………そ、うだね。」
私は、リビングに入り仏壇の前に置かれた
お母さんの写真を見つめた。
お母さんは3年前事故で他界。
それから、私はお母さんの写真を見る事も、
お母さんの事を思い出すこともしなくなった。
だって、涙が出るから。
事故現場にいた私はもう、
“お母さん”という言葉だけで
事故の情景が浮かぶ。