婚カチュ。


「そうなんです。もういい年ですし、私の地元は若者自体が稀少ですから、東京でお相手を見つけていくほうが早い」

「青森までついてきてくれる女性、というのが大前提ということですね」

「その通りです」
 

満足そうにうなずいて、彼はわたしを見つめた。


「やはり、頭の回転が速い」
 

べつにたいしたことは言っていないのに。

どう返せばいいのか悩んでいると、彼は肩の力が抜けたらしく、ちいさく息をついた。


「ここの相談所の社長さんもそうですが、美しくかつ知的な女性はみなさん、だいたい仕事を持っておられる。そうなるとなかなか青森までついてきてくれません。
よく知りもしない男と、知人のいない田舎に行くのは抵抗があるでしょうからね。とてもいいところなんですが、それでも東京と比べると不便は多い」
 

戸田さんは確か34歳だったはずだ。
職業柄だろうか、甘い雰囲気の見た目とはうらはらに、どこか押しの強さみたいなものを感じる。

笑みを浮かべたまま、彼は続けた。

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