婚カチュ。


2  ◇ ◇ ◇

 
両開きの扉を抜けると、両脇に立っていた配膳係がにこやかにウエルカムドリンクを渡してくれた。
希和子に続いてそれを受け取り、未知の世界へと足を踏み入れる。
 

天井が高かった。
グランドホテルのバンケットホールには、数百人もの招待客が集まり、そのほとんどが煌びやかなオーラをまとっている。
 

場違いだ。
 
最初に抱いた直感に従って帰ろうとするわたしを、希和子があわてた様子で引き止めた。


「やだ、シイちゃんひとりにしないでよ」
 

シャンパンゴールドのワンピースで着飾りトップでまとめた髪をサイドに流している彼女はとても華麗だけど、この場では目立つということもなく周囲に馴染んでいる。
全員が正装しているのだ。

わたしも同僚の結婚式に呼ばれたときに購入したパープルのシフォンドレスを着ているけれど、なんとなく浮いているような気がしてならなかった。

そもそも、ここにいる人間はわたしと人種が違う。

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