婚カチュ。
 

広い会場には清潔な白いクロスの張られたテーブルがあちらこちらに設置されている。
結婚式の披露宴に近い華やかさだけれど、立食パーティーのような様相で、集まっている人々も明らかに上質だった。

ふと、会場内に拍手が沸き起こる。
見ると正面のステージに小柄な男性がのぼったところだった。

浅黒い肌に明るい色の髪とシルバーに煌くタキシードを着込んだその人は、一歩間違えるとホストのような装いだ。
彼はスタンドマイクに手をかけて、来賓に白い歯を見せた。


「皆様、本日はお足元の悪いなか、当社の設立10周年記念パーティーにお越しくださりありがとうございます。代表取締役の星野です」
 

シャンパンに口をつけながら、あれがこの会の主催者か、とぼんやり前方を眺めた。
となりの希和子はこの場を目いっぱい楽しむつもりらしく、目を輝かせている。


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