婚カチュ。
「広瀬、さ」
「シイちゃん、ヒデから電話きちゃった。ちょっと出てくるね」
横から希和子があわただしく言い、出入り口に向かっていく。その後ろ姿を見送って、広瀬さんはつぶやいた。
「ご友人といらしてたんですか」
「ええと、はい。希和――友人の知り合いの知り合いが招待状をもらったみたいで、便乗した次第です」
広瀬さんは? と目を向けると、彼はとたんに口を結び、困ったように頭を掻いた。
今日はメガネをかけていない。
「僕は、ええと――」
「広瀬くん」
今度は彼のほうに声がかかった。
広瀬さんの傍らでニカッと白い歯を見せる浅黒い肌の男性を見て、わたしは「あっ」と声を上げそうになった。