婚カチュ。
「星野さん、ご無沙汰してます。本日はおめでとうございます」
広瀬さんが丁寧に頭を下げる。わけが分からないまま、わたしも習って会釈をした。
目の前に立っているのは、さきほどステージで挨拶をしていたホストのような若手実業家だった。いや、主催者という立場からすれば紛うことなきホストといえる。
若手といっても、本物の若者である広瀬さんと並ぶと肌の色艶がすこし劣っていた。30代なかばくらいだろうか。彼はわたしに目を移した。
「そちらの女性は?」
不自然なほどに真っ白の歯が間近できらめく。広瀬さんは横目でわたしを見て、
「あ……友人です」
「なんだ、綺麗な方だから、てっきり広瀬くんのパートナーかと思ったよ」
「いえ、残念ながら。僕の片想いです」
男性たちの紳士然とした会話に胸が高揚する。
真に受けてはいけないと分かっているのに、広瀬さんのセリフがわたしに絡みついた。