婚カチュ。
ちょっと話したいことがあるんですけどいつなら空いてますか、という松坂のメールに対して、電話でなら今でもいいよ、と返信したところ後輩はすぐに電話をかけてきた。
わたしの居場所を聞くと今からいきますと言って、本当にここまでやってきたのだ。
「で、話したいことって?」
「ああ、来月またOB会をやるらしいんすよ。だから先輩も久しぶりにどうかなって」
わたしはちいさく首を振った。
「わたしはいいや」
「そうですか」
後輩はあっさりと引き下がる。まるで最初からわたしの答えを分かっていたかのようだ。
「OB会ももう最近集まりが悪いんすよね。新しいヤツがどんどん増えていくわけだから当然だけど」
渋い顔をする松坂は、それでもみんなから出席を求められているのだろう。
年代を越えてムードメーカーであり、癒し系であり、中心人物でもあった。
彼はいつも笑顔で人懐こい。本当に、尻尾を振って毎回家族を出迎えてくれるレオのようだ。
ふと、いつだかのオフィスでの出来事を思い出した。