婚カチュ。


「もちろん、名前のとおりに紫も似合うけど、僕はこっちのほうが好きだな」
 

そう言って、わたしの頬に折りたたんだそれをかざす。


「ほら、かわいい」
 

彼の甘い微笑が、なんだか気恥ずかしい。


「これでいいかな?」

「はい……ありがとうございます」
 

品物を持って奥のカウンターに向かっていく戸田さんの背中はとても大きい。

太っているとかガタイがいいというわけではなく、内側からにじみでる自信のようなものだろう。とても頼りがいのある後ろ姿をしている。
 

希望条件である身長180センチには届いていないものの、ヒールを履いたわたしよりは背丈があるし、顔だって悪くない。

職業は弁護士先生で、性格はちょっと変なところもあるけれど、優しいし誠実だ。
 

誰もがうらやむ結婚相手だと思う。

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